真冬はすっぽりと雪に覆われる。この寒さこそ、おいしさの秘訣。
秋田食産は仙北郡美郷町のメーカーで、自社の大根畑は約1ヘクタール。1年で13万本のいぶりがっこを仕込むという。
「うちのいぶりがっこは、自社で栽培した大根はもちろん、仕入れたものもすべて秋田県産の大根を使っています。食品添加物は使わず、塩、砂糖、酢、そして糠を使って漬け込みます」と教えてくれた。早速、その燻し工程を見せてもらった。
燻しの過程で、火加減を調整。それが「食感」のポイント。
燻し小屋では、この日も燻す作業が行われていた。天井から金属のフレームが吊るされており、一本ずつ大根を乗せて燻している。薪はじんわりと燃やされており、火力はそこまで強くなさそうに見える。
「燻し始めは火を強めにします。大根の水分を飛ばすんです。火加減で、シワの入り方も違ってきます。様子をみて、途中からはじんわりと火を入れるようにしています。そうすることによって、パリパリ感が変わってくるんですよ。水分が多いと日持ちが悪くなったりするので、そういった意味でも火加減はとても大事です」。
素人からすれば、燻してスモーキーな香りを付けることが目的のように思っていまうが、実はそうではない。大根の水分量をうまく調節することで、漬け上がりの味わいや食感などをコントロールしているのだ。
添加物を使わず、低い気温のなかでゆっくりと醸す。
倉庫には漬け樽がうず高く積まれている。1つの樽に約1,000本ほど漬けこまれている。
「これだけ雪深い場所なので、気温は十分低い状態が保てます。気温が高いと、勢いよく発酵してしまうので困りますが、ここの環境であれば冷蔵庫も必要ありません。低い気温だからこそ、じっくりゆっくりと醸すことができます。うちのいぶりがっこは、クセが少なく、とても食べやすいと評価いただいています。添加物を使用しなくても、しっかり管理して漬け込みを行っているおかげで、おいしいいぶりがっこができあがるんです」。
実際、秋田食産のいぶりがっこは、しっかりと味を感じるがその味わいに角がなく、まろやかだ。それでいて、パリパリの食感が楽しめる。漬け材料だけでなく、燻しの工程での細やかな調整がそれを可能にしているのだ。